「素」:しろぎぬ。白い。染色していない。 ありのまま。飾り気のない。もってうまれたまま…。

もって生まれたままの素材をそのまま活かすことを私達は尊んできました。木は木らしく。鉄は鉄らしく。織りは織りらしく。素材にはそれぞれの素材の特徴・個性があり、したがってその素材から生まれる「かたち」も、高い蓋然性を持って自ずと決定されていくとされています。

しかし、もしその素材がそれぞれの個性の限界を超えるなら、「かたち」はそれまでの造形の有様を維持することをするでしょうか。素材を活かすこととは同時に素材の形に限界を設けてしまいます。けれど、人は美のかたちに限界を設けることを好みません。より美しいかたちを求める美への要求は、ついには素材の限界を乗り超え、全く新しい性格を身に纏ったしろ(素)き素材そのものを作りだし、作者は素材を全く新しい造形に昇華させていくことでしょう。超絶なる技と、熱き情熱と、作品と対峙するたゆまない美意識を持って。

『しろ(素)きかたち』展は、その素材と対峙し、素材に極限までこだわり、素材に秘められた内なる輝きを発見し、素材の無限の可能性を引き出して、素材の限界を超えることでしか生まれない新しいアート(造形)に挑戦している若き芸術家たちの共同展です。

温柔な織物のような陶器。土塊のような硝子。波紋を持つ青銅。段通のように刺繍された鍛金。昆虫の羽を持つ夜光貝。花の痩躯を持つ錆鉄。ただひたすらに青き有機躯体の吹きガラス…等々。それと対峙したものは皆、はじめての造形と素材の振舞に驚きと感動を覚えること間違いなし。是非とも実物を見て、限界を超えた素材が織りなす驚きの芸術作品群を体験してほしいと思うのです。

Gallery Land’sEnd 坂本直義