2019年4月
🔶『長野久人&アンドレイ・ヴェルホフツェフ展』2階ギャラリー展示
🔶『長野久人&アンドレイ・ヴェルホフツェフ展』お二人の共同展
🔶アンドレイ・ヴェルホフツェフ氏のアートについて
アンドレイ・ヴェルホフツェフ
アンドレイはロシアで生まれた。ロシアの美術学校で絵画を学んだ。ロシアは西洋の伝統的芸術の有様が最も色濃くある国であるので、アンドレイの描く油絵も西洋の古典的美しさに溢れている。そして彼も自分の絵画のモチーフにシュールレアリスムを選んでいる。今回は、彼は写真での展示であるが、シュールな雰囲気は健在だ。
写真は白黒の人物写真。モデルは妊婦の裸体。自分自身も妊婦のように化粧して被写体となっている。裸体の写真は珍しくは無いが、妊婦のみとなると話は別だ。写真は「BODY」と銘打たれているので、肉体の肉体的形象の描画を写真のテーマに選んでいるといえよう。被写体は美しい。ギリシャ彫刻のような古典的彫塑の美しさを醸し出している。でありながら、どうしてシュールな雰囲気が出ているのか。それは被写体が妊婦であるからに他ならない。妊婦は必然的に形象が非日常であり、肉体が大きく歪む。母性がデフォルメされる。そこに普段にはありえない肉体の美しさが生まれているのだ。
🔶アンドレイ・ヴェルホフツェフ プロフィール
1971年 ロシア国ミチューリンスク市に生まれる
1996年 レーピン芸術アカデミー卒業
1995年~2008年 ロシア、欧米で個展、グループ展開催
2011年 個展「アンドレイ・ヴェルホフツェフ絵画展」 ぎゃらりー光
2012年 「第21回全日本アートサロン絵画大賞展」 ターレンスジャパン賞
2013年 「第22回全日本アートサロン絵画大賞展」 産経新聞社賞
2012年 個展「アンドレイ ヴェルホフツェフ展~イリュージョン」 ギャラリー ルネッサンス・スクエア
2013年 個展「アンドレイ ヴェルホフツェフ展」 乙画廊
2013年 「ART OSAKA 2013」
2013年 「アート2014干支展」 あさご芸術の森美術館
2014年 「郷土作家展」 姫路山陽百貨店 (15、16、17、18、19年も)
2014年 「第23回全日本アートサロン絵画大賞展」佳作
2014年 個展「アンドレイ ヴェルホフツェフ展―生命線―」 ギャラリー島田
2014年 個展「アンドレイ ヴェルホフツェフ展 FACE to the SEA」ホテルseashore御津岬
2014年 アンドレイ アート アカデミー展覧会 香寺図書館ギャラリー
2014年 個展「アンドレイ ヴェルホフツェフ展 享楽の園」画廊喫茶白ばら
2014年 「第14回ミニアチュール・神戸展2014「Change」ギャラリー島田
2014年 個展「アンドレイ ヴェルホフツェフ展」 乙画廊
2014年 「第10回西脇市サムホール大賞展」入選
2014年 「アート2015干支展」あさご芸術の森美術館
2015年 「第24回全日本アートサロン絵画大賞展」優秀賞
2015年 個展「アンドレイヴェルホフツェフ展~天と地の間にて~」 ギャラリー ルネッサンス・スクエア
2015年 「ART OSAKA2015」
2015年 「第32回FUKUIサムホール美術展」入選
2015年 「ミニアチュール神戸展vol.15 ホワイボン」ギャラリー島田
2015年 「1995-2014全国公募 西脇市サムホール大賞 軌跡展VOL.III」西脇市岡之山美術館
2015年 個展「アンドレイ ヴェルホフツェフ展-My Dream-」ギャラリー島田
2015年 「全国公募 第10回丹波美術大賞展」入選 丹波市立植野記念美術館
2015年 「アート2016干支展」 あさご芸術の森美術館
2016年 「第25回全日本アートサロン絵画大賞展」産経新聞社賞
2016年 個展「Quiet-静けさ- アンドレイ ヴェルホフツェフ」ガレリアプント
2016年 個展 ぎゃらりー&喫茶 やまだ(17、18年も)
2016年 個展「アンドレイ・ヴェルホフツェフ展」西脇市岡之山美術館
2017年 個展「ANDREY VERKHOVTSEV展」 ギャラリー島田
2017年 個展 画廊喫茶白ばら
2017年 個展「天田杏土礼 油彩画展Sweet Feeling」姫路ヤマトヤシキ特選ギャラリー
2017年 「アート2018干支展」 あさご芸術の森美術館
2018年 個展「アンドレイ ヴェルホフツェフ展」ギャラリーランズエンド
2018年 丹波篠山・まちなみアートフェスティバル2018
2018年 龍野アートプロジェクト2018「混成軌道」
2019年 個展「アンドレイ ヴェルホフツェフ展 百富士繚乱」アートギャラリー北野
2019年 「長野久人&アンドレイヴェルホフツェフ展 世界の誕生」ギャラリーランズエンド
🔶長野久人氏のアートについて
【長野久人】
長野は易、四柱推命、気学、風水といった東洋思想の基礎となる陰陽五行思想に基づいて作品を作るという。例えば多くの作品を彩る黄色は大地を表し、大地は生命の育むものとして存在し云々と、自然と宇宙の存在に連なるものことを示唆している。したがって作品はどれも寓意的である。
彼は自然の造形物を極限までリアルに造る。果実を、昆虫を、人間(乳児)を造る。しかし同時に、それらを巨大化し縮小し、変形し、歪ませ、着色し、デフォルメする。そしてそうして造られた造形物に機能を持たせる。それは普通に皿やカップなどの食器にとどまらない。驚くべきことに冷蔵庫や洗濯機、掃除機、照明器具、暖炉にもなる。そしてどれもが実際に稼動するのだ。その造形物に敢えて名称を付けてみよう。「受精卵型食皿」「胎児型洗濯機」「乳児型掃除機」「幼児型ランプ」……。日常品が変形し、アートを身にまとい歪んでゆく。その驚くべき風景。時として愉快で、愛らしく、時としておぞましく、醜くもなるのだ。愛玩と恐怖の混在。非日常の現実世界が展開する。
長野は東洋思想に制作の基盤を置いているのに、僕は長野の造形に近似するものを東洋に知らない。敢えて挙げるなら西洋のシュールレアリスムの思想から誕生した作品に近いということに、異論を唱える人もまた少ないのではないだろうか。
【シュールレアリスム】シュールレアリスムというと、美術愛好家ならすぐにダリとかキリコとかマグリット、デュシャンなどの画家を思い浮かべる人、または「超現実主義」や「形而上絵画」といった言葉を思い浮かべる人がいるはずだ。でも僕はこの「超現実主義」という日本語訳にいつも違和感を抱いている。というのは、どんな芸術であれ現実を超えようとしない芸術などあるはずが無いから。「超現実主義」という言葉は全ての芸術に当てはまるのだから、シュールレアリスムの特徴を表すのに「超現実」という言葉はふさわしくないと思う。
僕は個人的にはシュールレアリスムの日本語訳は「歪現実主義」がいいと思っている。シュールレアリストは現実を超越しようとは思っていないし、また現実を破壊することも、現実とは無関係の全く新しい芸術を創造しようともしていない。彼等は現実を歪ませて、現実とはほんの少しだけずれたところに非現実的な、不思議な、不条理な世界を見ようとしている。彼等は「白日夢」を創造しているのだ。
彼等は現実の事物をありのままに描く。しかし、事物と事物を現実にはありえない組合せとか、衝突とか対比をもって描く。また、現実の事物を変形したり、歪ませたり、溶解したり、デフォルメしたりして、現実にはありえない世界を創造していく。同時に決して現実の世界を破壊はしない。あくまで現実世界から夢を見るのだ。彼らの夢は「希望」などではない。「美しき夢」でもない。彼らの夢は「悪夢」。不条理で、不可思議で、形而上的で、おぞましい。シュールな風景とはそのようなものなのだ。
こうして長野の世界と、シュールの世界が同期していく。
ギャラリーランズエンド 坂本 直義