マンガ(いわゆるストーリー漫画)とは、作画だけでなく 「原案」「脚本」「効果」「演出」などを ひと作品として個人(あるいはグループ)で練り上げて制作して行く【 総合芸術 】の一つである

 

限られた時間内に、テーマを決め(あるいは与えられ)編集方針に沿う作品を練り上げ、実際に手作業として作り 出して行く作業は、まさに過酷と言えるものだったであろう。 商品として成立するレベルの技術力は言うまでもなく、マンガというものに対する情熱と、自らの作品を生み出そうというエネルギーの計り知れない強さを持っていなければ、決して成り立たない仕事である。
小林澪子回顧展」では、小林澪子の1990年頃~2002年頃の手描き原稿も展示して、人物などの主線以外にも、 ワク線・黒べた・スクリーントーン・ホワイト修正など手仕事の跡がのこる、小林の仕事ぶりを紹介する。
原稿内の文字部分(ネーム)は、作家が鉛筆で薄く下書きした上に、出版社の編集デザイン部が写植(印字)をひとつ ひとつ手貼りしていた。 他にもトーンの浮きやはがれ、原稿面の汚れチェック、線の微妙な掠れの修正などは編集デザイン部のデザイナーが 手作業で行なっていた。原稿に被せたトレーシングペーパー上に書かれた製版指示など、入稿から印刷に入るまでは 短い時間であろう慌ただしい現場の様子も、同時に感じてほしいと思う。

 

 

《クローゼットルーム》より

 

 

《死にたい》より